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元ネタ:「かまぼこセヤナーの生態」 双頭あと 様
    並びにセヤナー考察スレ>>46及び>>48


セヤナーのかまぼこ、ご存じでしょうか。
そこそこ大きめのスーパー等に行きますと、お高めなおつまみコーナーなどで見かけるものです。
柔らかなのに意外としっかりした噛み応えで、少しの甘さもある中々に濃い味の旨味、飲み込んだ後に残るほのかな甘い香りも合わせてこれがまた酒の進む……おっと、失礼しました。
気を取り直しましてこのセヤナーのかまぼこ、どのように作られているかまではご存知でしょうか?
魚で作るかまぼこと言えば、磨り潰したものを練って成形したものです。ではセヤナーも? と思うかもしれませんが、それは違います。
なんと、お店で売られているセヤナーのかまぼこは、とある種類のセヤナーが自分で作っているものなのです。
このかまぼこを作るセヤナーのことを総称して、かまぼこセヤナーと呼んでいます。分かりやすくていいですよね。
どうしてかまぼこセヤナーが、何の為に自分の身を削ってまでかまぼこを作るようになったのかは諸説ありますが、それはまた別の機会にということにさせて頂きまして。
今回は人とかまぼこセヤナーの関わりの歴史を交えつつ、皆さまの食卓に上るセヤナーのかまぼこがどのように集められているのか、それをお話させていただきたいと思います。

セヤナーと人の歴史がそう長いものでないことから、当然ですがかまぼこセヤナーと人との歴史も百年に満たない浅いものとされています。
この国の歴史書を紐解くと、江戸や明治の文献にもごくわずかにセヤナーらしき記述を見かけることもありますが、いずれも信憑性の高いものではありません。
セヤナーそのものがそうであったように、かまぼこセヤナーもまた第二次世界大戦後の復興期から人と関わり始めたと考えられています。
とはいえ、かまぼこセヤナーと人との関わりの始まりは、決して穏当なものではなかったことは想像に難くはありません。
外敵に対して自らの肉片を投げるかまぼこセヤナーと、地面に投げ捨てられた肉片も食べてしまう人間がいた、戦後間もなくの惨状が合わさった結果、
初期の初期では人によるかまぼこセヤナー狩りが行われたのではないか、というのが研究者の間では通説となっています。
(本体自体は基本的に無味でマズ味成分も併せ持つことから、命まで失ったかまぼこセヤナーの数はそこまで多くないと言うのも通説ですが。)

やがて、人間側が文明の灯りを取り戻し、食うにこだわる余裕もまた取り戻した頃、かまぼこセヤナーはそのかまぼこの味に着目を浴びるようになりました。
しかし人間に何度も追われたかまぼこセヤナーは、その頃には住処を人里から遠く離れたところに移していたのです。
いくら食料を提供する存在と言えども、食うや食わずやの時代にかまぼこセヤナーを飼育しようとした酔狂者など居る筈も無く、
また地面に投げ捨てられたものをそのままで食べることから悪食とされ、地位のある富裕層から忌み嫌われたことも向かい風となったことで、
わざわざ人里を遠く離れたところまで、かまぼこセヤナーを探しに行くものも行かせる者も表立っては居なくなりました。、
このままかまぼこセヤナーは表舞台から忘れられることに──は、なりませんでした。まぁ、今があるんですから当然ですけどね。

かまぼこセヤナーと人が狩る者狩られる者でない関係を持つにいたった始まりは、実のところよく分かってはいません。
ある者がたまたま見つけたかまぼこセヤナーを飼いはじめたことだとも、山奥の村からふもとの村への交易品にセヤナーのかまぼこがあったことだとも、諸説あります。
確かなことは、あるころから人はかまぼこセヤナーを威嚇するのではなく、引き換えに何かを与えることでかまぼこを得る様になったということです。
「なぁなぁセヤナー。このエビフライあげるから、あんたのかまぼこくれへんか?」
「ヤッ? ヤーッ!! エビフライー、エビフライー! タベタイー!」
「こら、あかんて。あげるんちゃうよ、あんたのかまぼこと交換ゆーとるやろ」
「ヤー…。 カマボコ、シラヘンー。 モッテヘンー」
「かまぼこってのはな、ほら、あんたが怖いのから逃げる時に投げる奴や」
「アレカー? ナラアルデー、コウカンー、コウカンー。エビフライー」
なんて会話があったことでしょう。まぁこの会話は私の妄想なんですけど。
ともかく、こうしてかまぼこセヤナーと人との本当の意味での関わりが始まっていきました。

現在、詳細な資料が確認されていないことからも分かるように、その始まりはとても静かなものでした。
しかしその静けさはそう長く続かなかった、と言われています。かつてかまぼこセヤナーを口にし、その味を忘れられずにいた人たちは存外に多かったのです。
また、かまぼこセヤナーと直接取引するようになったことで、地面に落とされなくなった為、悪食の誹りが次第と消えて行ったことも大きかったと思われています。
需要が生まれれば、それを供給して稼ごうと考えるのが人間です。
かまぼこセヤナーについてもそれは例外ではなく、村ぐるみ、町ぐるみでかまぼこセヤナーを育てようという試みがあちこちで生まれました。
こうして現在まで続く【かまぼこセヤナー村】が始まりました。ここまで長くなってしまいましたが、この【かまぼこセヤナー村】こそが、私達の食卓にセヤナーのかまぼこを届ける存在なのです。
ここからさまざまな苦難や試行錯誤があり、【かまぼこセヤナーに自主的に渡して貰うのが最も質が良く、長期的には効率も良い】と言う現在の結論に至るのですが、
そこまで語ると長くなりすぎてしまいますので、それはまた別のセヤ学の時間にお話するとしまして、ここからは現在の【かまぼこセヤナー村】についてお話しましょう。

日本全国に【かまぼこセヤナー村】と呼ばれている場所は十数か所ありますが、ほぼ全てが山中など自然が多く、人里離れた広い土地にあります。他の牧場と兼任している所も多いです。
これは広い土地で放し飼いにした方が、かまぼこのセヤナーのストレスが少なく、良質なかまぼこが取れるためで……おっと、この話題はまた長くなってしまいますね。
そうですね、ここはとある村、と言っても村とは名ばかりでほぼ牧場ですが、そこを例にとってその一日を説明していきましょうか。

牧場の朝は早いといいますが、【かまぼこセヤナー村】は一種の牧場にも拘らず、それが当てはまることはありません。
かまぼこセヤナーも他のセヤナーと同様に寒さは苦手とする為、朝は中々起きて動こうとしないのです。
季節や村の場所によっては昼まで動いてこないこともあるそうですが、私が取材に赴いた時のその村では大体十時頃でした。
「オハヨー」「オハヨーサンヤデー」「オハー」
そんなこと言いながら思い思いのタイミングで出てくる大勢のかまぼこセヤナーたちの姿は、中々に可愛らしくて見ごたえがあります。
まず交通の便が悪いところにある【かまぼこセヤナー村】ですが、セヤナーたちの朝が遅いので時間にゆとりを持っていっても見どころを逃さずに済みますよ。
観光地として静かに人気を集めている理由には、そんな所もあるそうですね。

起きて小屋から出て行こうとするかまぼこセヤナーたちが最初にすることは、朝ごはん、ではなくて、職員によるタグの回収です。
タグは飼いセヤナーたちに付ける者と大体同じもので、髪飾りの部分に付けることでセヤナーたちでは取り外すことが出来ないようになっています。
自分からは見えない位置についているはずなんですが、ちゃんとついてるかどうかは分かるようで、自主的に外して貰いに来ます。その理由はまた後ほど。
このときですが、たまにそそっかしいセヤナーが観光客に「トッテー、トッテー」と寄って来ることもあります。私の所にも来ました。
当たり前ですが勝手に取ったら怒られますので、ちゃんと職員の所に誘導してあげましょう。「アリガトナー」が聞きたいからってとっちゃダメです。はい。ごめんなさい。

タグを外されたかまぼこセヤナーたちは、今度は別の小屋に移動して、自分のかまぼこと引き換えに新しいタグを付けて貰います。
この新しいタグがその日のかまぼこを回収した証明であり、セヤナー側からはその日は村で面倒を見てもらえる権利を買った証明になります。
タグが無いと、ご飯ももらえませんし、暖かい小屋の中に入っても追い出されますし、何かあっても助けてもらうことが出来ません。
タグを付けて貰った子が、そのまま朝ごはんのセヤナーフードを嬉しそうに頬張っているその裏で、
生産能力が低い子がかまぼこを作れず、タグが貰えないまま哀しそうに去っていったり、居座ろうとして追い出される姿はちょっと来るものがあります。
……ですけどね、その姿を見せつつ、小屋の入口横にセヤナーフードの販売機を置くのは狡いと思いました。
かまぼこセヤナーたちもそのことを分かっているようでして、チラ見してきたり、真正面からねだって来るんですよ。
「オネガイー」なんて見上げながら言われたらもう、ですね、タグ有り無し関係なく餌付けしてもお咎め無しですしつい……おっと、脱線してますね。

その後かまぼこセヤナーたちはタグの有り無しに関わらず、村の敷地内を思い思いにうろつき始めます。
こうしてうろついているかまぼこセヤナーたちについては、タグの有無にかかわらず、観光客が自由に触れ合ったり、(敷地内で購入したものなら)餌付けして良いことになっています。
かまぼこセヤナーではないセヤナーやダヨネー等々がエサ目当てにしれっと混じっていることもありますが、その子たちについても自由です。というかタグ無しは判別できません。
街中のセヤナーカフェと違って、セヤナー側が逃げたり隠れたりが十分できるおかげで、かなり自由に出来ることが観光地的には売りだそうです。
といっても限度はありますし、野生扱いのタグ無しでも過剰な危害を加えると、職員に通報されて警察のお世話になりますからね?
また、朝に回収されたかまぼこは、こうしてセヤナーたちが放牧されている間に梱包、出荷されています。
大体三時過ぎには出荷処理が終わるとのことで、早ければ翌日、遅くとも三日以内にはスーパー等に並んでいる、とのことでした。

昼の暖かいうちは他のセヤナーと遊んだり、観光客と話したり、木陰でお昼寝したりと思い思いに過ごしているかまぼこセヤナーたちですが、
夕暮れの冷え込ころになると、タグを持っている子たちは暖かい小屋の中に帰り始めます。晩ごはんも、小屋の中で食べることになります。
この時タグ無しの子もしれっと混ざっていたりしますが、バレた時点で小屋、時には敷地から追い出されてしまいます。
追い出されたり、初めから小屋に帰れないことが分かっているセヤナーたちは、観光客に哀しそうな目を向けてきたり、「ウチモーツレテッテー」とねだってきますが、
野生のセヤナー種の持ち帰りは禁止行為なので持ち帰ってはいけません。さもないと、職員さんにまたお前かと言いたげな目を向けられることになります。ええ、結構きつかったです。
小屋に入る事の出来なかった子たちは、敷地内の草むらや岩陰を住処にしたり、敷地の外に住処を求めることもあるようです。
とはいえ、敷地の外に出て行くのは小屋の中をほとんど知らないかまぼこを出さないセヤナーたちで、小屋を知るかまぼこセヤナーたちはまず敷地から出ようとしないそうです。
そのせいで観光客の少ない日、いない日は晩ごはんにありつけず(敷地内にはエサとなる生物があまりいません)、余計に生産性を悪くし、淘汰されてしまう子もいるとのことです。

また特記すべきこととして、朝にタグを取り外さずに、さも当たり前のように夕方の小屋に入ろうとしたかまぼこセヤナーのことがあります。
実は朝にタグを付け替えるのは、形や色、日付などでセヤナーには分からないよう、いつの日に付けたタグなのか判別できるようにしているためです。
これにより、上述したような不正行為を防いでいる訳ですね。とはいえ、故意に不正を働くのはタグ無しよりも質が悪く、職員としては困った存在です。
その為ほぼ全ての村では、不正を働いたかまぼこセヤナーに対して見せしめを兼ねた罰則があります。
この村では、黒い鍵付きのタグが着けられ、それを他のかまぼこセヤナーたちにも見せつけた後、敷地の外へと追い出し、戻ってきても即座に敷地の外へ追い出すそうです。
一応、罰から一月を経て帰ってきた子についてはタグを外すということにもなっているそうですが、戻ってきた例は数少ないのだそうな。
これにより、「ワルイコトシタラナー、モウカエッテコレンノヤー」という共通認識がかまぼこセヤナーの間に広まり、不正を働く頻度が大きく減ったとのことです。
朝の内にかまぼこセヤナーたちが自分からタグを外しに来てもらうのも、このことに起因しているそうです。
ちょっと残酷だという意見もあるかもしれませんが、悪い芽は早めに摘んでしまった方がお互いの為なので、仕方のない事なのでしょう。

朝の遅いかまぼこセヤナーたちですが、じゃあ夜も遅いのかというとそんなことはなく、日が沈んで気温が下がってくると、早々に眠り始めます。
閉村時間間際には、小屋の中で幸せそうに眠るかまぼこセヤナーたちの姿を見ることが出来ます。あちこちから聞こえる寝息がちょっとうるさいですが、可愛らしいので機会があれば見てみてください。
ただ、敷地内の小屋の外で眠っている子を探すのはやめましょう。寒さで眠りが浅いのか、近づくとすぐに起きてしまって可哀想ですので。
また余談ですが、時々寝てる間に分裂して増えていることがあるので、眠り始めたらタグ無しの追い出しなどは行わないそうです。

以上が、【かまぼこセヤナー村】の主な一日の様子になります。
このような形でかまぼこセヤナーから提供されたものが、私達の食卓に上っている訳ですね。
私達は美味しいものがたべられて、かまぼこセヤナーたちは暖かい暮らしを手に入れられる、まさしくWIN-WINの関係です。ちょっと自然の厳しさもありますが。
観光地として訪れてもなかなかに楽しめる場所ですので、興味がおありでしたらぜひ訪ねてみてください。きっといい思い出になりますよ。

それでは、今回の所はこれにて。

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